能力不足、成績不良を理由とした解雇はどのような場合に有効となるのでしょうか。
1 解雇が有効となる場合
解雇が有効と認められるには、
⑴解雇に客観的合理性があること
⑵解雇が社会通念上相当であること
という厳しい要件を満たしている必要があります。
そしてこれまで蓄積された裁判例から、裁判所は、能力不足等とは、労働者の能力不足が著しく、会社の他の部署でも活用できず、辞めてもらうより他に方法がない(向上、改善の見込みがない)と言えるほどのレベルである場合に、上記要件①②がある(つまり解雇として有効)と判断しています。
さらに裁判所の判断基準を細かくみていくと、以下の4点が重要視されているポイントと思われます。
①著しい能力・成績の不良かどうか
②評価が公正・公平かどうか
③改善の見込みが乏しいかどうか
④業務に支障が生じているかどうか
2 裁判所の重視するポイント
①著しい能力・成績の不良かどうか
裁判所は、解雇が有効といえるためには、単なる能力不足・成績不良だけでは足りず、それが「著しい」レベルであることを求めています。これは、能力不足や成績不足が、客観的には中々判断しづらいためと思われます。
そのため、能力不足、成績不足が「著しい」といえるためには、単に勤務評価制度における低評価や他の労働者と比較して低い(相対評価)だけでは足りないと考えられます。勤務評価制度は主観が入り得るものであり、また相対評価では必ず低い者が出てくるためです。
また、絶対的に能力が低いという理由であっても、処分には降給・降格など解雇より軽いものもあるので、直ちに解雇に値するほどの能力不足に該当する事例はそう多くはないと思われます。裁判例で著しい能力不足と認定された例としては、読み書きができない、英語が必須の職場で英語が話せない、プログラマーとして採用されたのにプラグラムができなかったという事例があります。
②評価が公正・公平かどうか
評価の対象となる具体的事実の有無だけでなく、評価をする者、評価基準が公正・公平であるかも重要です。例えば、評価基準が客観的な数値でなく、上司等の主観によるものであった場合、裁判所は、能力不足等の評価について慎重に判断することになります。
また、評価基準が客観的な数値であっても、その数値が妥当でない場合(例えば、他の者も誰も達成できない数値であったり、当該労働者のみ他の者に比べ突出して厳しい数値であったりする場合)も、評価が公正・公平でないと判断される可能性が高まります。
また、能力不足等を理由としているのは表向きの理由で、実は当該労働者の組合活動や使用者との人間関係の悪化等、実質的には他の理由で解雇とする場合もあり得ます。これはもちろん公正・公平な評価とはいえず、解雇に客観的合理性はないということになると思います。
③改善の見込みが乏しいかどうか
仮に、労働者の能力不足等が認められたとしても、裁判所は、それだけでは解雇を有効とはしません。
裁判所は、今後も当該労働者の能力に改善の余地はないか、他の部署に配置転換できないかといった点も考慮します。また、会社の当該労働者に対するそれまでの指導や研修が十分なものであったのか、指導等に対する当該労働者の対応等も考慮されます。
具体的には、当該労働者の勤務年数、経歴、労働者のミス、トラブルに対する会社による注意、指導の頻度・回数、面談、配置転換、降格・降級の有無、これらによる当該労働者の能力改善の効果、能力改善への意欲等が考慮されます。
④業務に支障が生じているかどうか
仮に能力が著しく不足していたとしても、実際、会社の業務に支障が生じていないのであれば、解雇の正当な理由があるとはいえません。
例えば、他者とのコミュニケーション能力が著しく不足していると判断されても、当該労働者の担当業務が人との接点があまりない、人とのコミュニケーションをほとんど必要としない業務であり、担当業務自体には支障がない場合、コミュニケーション能力不足により会社の業務に支障が生じているとはいえず、能力不足等による解雇に客観的合理性はありません。
3 弁護士の重要性
以上のように、解雇が有効といえるためには、相当ハードルは高く、解雇が無効と判断されるケースは多いです。
そこで、能力不足や成績不良を理由に解雇された場合は、まずは弁護士にご相談ください。
またその場合は、労働事件を多く扱っている法律事務所や労働専門の弁護士に相談すべきです。
グリーンリーフ法律事務所は、地元で30年以上の実績があり労働事件も数多く手がけており、また必ず労働事件専門チームの弁護士が担当します。
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