紛争の内容

在職中から勤務先の賃金体系に疑問を持っていたが、退職するに伴い適正な賃金が支払われていたかを確認したいとのご相談でした。
残業代請求の基礎となる資料が一部しか手元にない状態でしたので、勤務先にタイムカード等の資料の開示を求めるところから始めました。

交渉等の経過

勤務先に対して過去2年分の残業代請求をするとともに残業代計算の基礎となる資料の開示を求める内容証明郵便を送付しました。
勤務先からはタイムカード等の資料が開示されましたが、あわせて固定残業代制度を採用しているため未払残業代は存在しないとの主張がされました。
その点に関する主張のやり取りを行いましたが、双方の主張は平行線を辿り、消滅時効中断のため、やむなく訴訟を提起することとしました。

本事例の結末

訴訟においても同様の主張のやり取りが行われましたが、ある程度主張が出揃った段階で裁判所から固定残業代の主張を全面的に認めることはできないとの見解が示されたことにより、和解に向けた協議が進展しました。
結論として、解決金450万円を支払う内容の和解が成立しました。

本事例に学ぶこと

固定残業代制度を採用している使用者からはそれにより残業代は支払済みであるとの主張がされますが、固定残業代制度が有効となるハードルは高く設定されています(=完全に有効な固定残業代制度は少ない)ので、固定残業代制度が採用されている場合でも残業代を請求できるケースは多く存在します。

弁護士 吉田竜二