運転手の方が会社を退職した後、会社に対して未払いの残業代を請求することを当事務所へ相談しました。会社との間の労働条件が明示されていないところがありましたので、この点が争点になる事案でした。
交渉・調停・訴訟等の経過
会社側は就業規則を開示し、ある手当を固定残業代を支払っていることを主張しました。依頼者の方が知らないことでしたが、ある手当が固定残業代であることは就業規則に定められており、就業規則は労働者に周知されている、という主張を会社側は行いました。実際に、手当は他の基本給などとは区別して記載されており、また、実際の労働時間に見合った金額の手当が支払われているようでした。
本事例の結末
裁判例を見ますと、固定残業代と区別して固定残業代が支払われており、また、実際の労働時間に見合った固定残業代が支払われている場合は、固定残業代の支払いによって残業代支払い義務は消滅するということが確認できました。そして、本件では、就業規則を従業員の方が見ようと思えばみられる状態になっていたということもあり、就業規則の定めも有効であるようでした。そのため、依頼者の方に説明をして、相手方の固定残業代の主張を認め、約90万円の残業代を支払ってもらい、和解することにしました。
本事例に学ぶこと
従業員の方が知らない労働条件が就業規則には記載されていて、就業規則を従業員の方が見ようと思えばみられる状況になっていた場合は、就業規則に記載される労働条件が有効になることがあります。本件はまさしくそのような事案でしたので、就業規則によって労働条件が決まることがあるということを改めて学びました。
弁護士 村本 拓哉