会社従業員が犯罪行為を行ったことをもって、懲戒解雇されてしまったというケースはよく見られます。就業規則に懲戒事由として「犯罪行為によって企業秩序を害した場合」が記載されており、これを根拠に懲戒処分がなされる場合があります。

もっとも、犯罪行為自体によって、常に懲戒解雇が有効となるとは限りません。経理部長が会社のお金を横領してしまった、などと会社の業務に密接に関連した犯罪であれば、当該懲戒解雇処分は有効となるでしょう。しかし、プライベートで電車の中で痴漢行為をしてしまったことを理由に懲戒解雇処分とされてしまった場合、当該懲戒処分の有効性を争う余地があります。

判例上、「従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及び会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大で、あると客観的に評価される場合」である必要があると判断されています(日本鋼管事件、最判昭和49年3月15日民集28巻2号265頁)。

同じ痴漢行為でも、鉄道会社の幹部職員が鉄道内で痴漢行為を行った場合と、全く関係のない職種の一般社員が痴漢行為を行った場合とでは、会社に向けられる世間の批判の目も異なるでしょう。痴漢行為の内容が悪質で、強制わいせつの罪にあたるような場合には、懲戒解雇処分を有効と判断する方向に傾きます。

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