会社が解雇ではなく、自主的な退職をするように促す行為を退職勧奨といいます。会社が退職勧奨をしてきたときに、どのように対応すべきか、また、どのような権利を主張できうるのかについて、解説します。

会社が退職勧奨を行う理由


従業員を退職させる方法としては、強制的に退職をさせる解雇の手続きがあるのですが、会社はそうではない退職勧奨の方法をとることが多いです。

その理由としては、
① 会社側に解雇するための理由・根拠がない
② 解雇をするための理由・根拠はあるものの、円満な退職を促すために、自主的な退職を促したい
というものが挙げられます。

退職勧奨は断ることができる?不本意ながら、退職勧奨に応じてしまった場合はどうしたらよい?


退職勧奨は、強制的な解雇ではありません。そのため、退職勧奨は断ることができます。しかし、会社側は、退職勧奨は断ることができると示すことなく、退職をするように要求してくることもあります。

そして、会社の職員が大声をあげて退職を迫るということもあります。このような場合に、会社の退職要求に応じてしまうということもありますが、あまりに会社側が強行的な手段を用いた場合は、脅迫行為を理由に、従業員側がしてしまった自主的な退職の意思表示を取り消すことができます。

例えば、会社側の職員3人が、入社間もない18歳の従業員が他の従業員と性交渉に及んで懐妊したことを理由に、その従業員を部屋に呼び、隣の部屋にまで声が聞こえるような大声で性交渉に及んだことを非難し、退職を迫ったという事例では、会社側の強迫行為を理由に、従業員が行った退職の意思表示が取り消すことができると判断しました。(昭和44年11月18日松江地方裁判所益田支部判決 労働関係民事裁判例集20巻6号1527頁)

退職勧奨があった場合は、どのような対応をすべき?


上記のように退職勧奨は断ることができるのですが、会社側が解雇することができるだけの理由や根拠を持って退職勧奨を行っている場合があります。この場合、退職勧奨を断っても、後に解雇される可能性があります。

そのため、自分が解雇されてしまうような理由や根拠があるかもしれないと思える場合は、会社側が退職勧奨を行う具体的な理由と根拠について、会社側に説明を求めましょう。会社側に文書でそれらの説明をしてもらえるとさらに良いと思います。

そして、その内容を踏まえて、自身が解雇されてしまうだけの理由や根拠が備わっているのかについて、検討をするのがよいと思います。また、ご自身だけで判断できないという場合が多々ありえますので、その場合は弁護士にご相談頂くことをお勧めします。

退職勧奨があったときにどのような権利を主張できる?


会社側に解雇できるだけの理由や根拠がないという場合は多々ありえます。会社側の経営難を理由に従業員に退職を要求すること、また、従業員側に作業上のミスや業務の懈怠があるものの、解雇できるほどの重大な落ち度ではないという場合は、往々にしてあります。

この場合、退職勧奨は断ることができますので、会社に引き続き在籍したいという場合は、会社側に対して退職勧奨を断ることをお伝えするのがよろしいかと思います。それでも、会社側がしつこく、退職勧奨を迫る場合は、弁護士が間に入って会社側に退職勧奨をやめるように通知を行うこともあり得ます。

また、退職勧奨は断ることができるが、このような会社にはもうとどまりたくないという場合は、解雇するだけの理由がないことを会社側に伝えて、金銭的な補償を求めることもあり得ます。

会社側に解雇できるだけの理由がないのに解雇を行う場合は、例えば、6か月分の給与の損害賠償が認められるということもありますので、そのような金額の金銭の支払いを要求するということもあり得ると思います。

さらに、いじめや嫌がらせを伴う退職勧奨を会社側がしてきた場合、会社に対して損害賠償を請求することもあり得ます。
例えば、複数の上役による暴力を伴ういじめが頻繁に繰り返され、無意味な仕事の割当てによる嫌がらせ・孤立化も行われた事例(東京高裁平成8年3月27日労働判例706号69頁)や、孤立させ辞めさせるための長期の嫌がらせが行われた事例(平成14年7月9日労働判例836号104頁)では、従業員側からの会社に対する損害賠償請求が認められています。

まとめ

以上の通り、退職勧奨が行われた場合にどのような対応をすべきか、また、会社に対してどのような権利を主張できるかについて解説をさせて頂きました。
実際に退職勧奨が行われたという場合には、以上の解説を参考にしていただけますと幸いです。また、ご自身だけではどのようにしたらよいか判断が難しいという場合は、弁護士にご相談頂くのがよろしいかと思いますので、法律相談をご利用頂けますと幸いです。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 村本 拓哉
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