セクハラやパワハラを理由に解雇された場合の対策
セクハラやパワハラを理由とした解雇と一口にいっても、そもそもセクハラやパワハラの事実がないという場合もあるでしょうし、仮にセクハラやパワハラと捉えられるような事実があったとしても、個々の事情によっては、解雇処分は重すぎて無効となる場合もあり得るところです。
そこで、以下のコラムでは、セクハラやパワハラを理由に解雇された際の対処方法について解説していきます。
「解雇通知書」と「解雇理由証明書」の交付を求める!
セクハラやパワハラを理由とした場合に限られる話ではありませんが、会社から解雇を宣告された場合にはまず、「解雇通知書」と「解雇理由証明書」の交付を求めましょう。
解雇通知書
解雇通知書とは、会社が労働者に対し、解雇の意思表示を通知する書面のことです。
もし仮に後で会社側が「労働者側の都合で自己都合退職した、合意解約した」などと主張してきたとしても、この通知書があれば、その言い分を否定し、解雇であることを主張できます。
解雇理由証明書
解雇理由証明書とは、解雇理由(解雇事由)について具体的に記載された書面のことです。
労働基準法22条1項に基づき、労働者から請求された場合に、会社が遅滞なく交付しなければならないものです。
セクハラやパワハラを理由とする解雇の種類が「普通解雇」なのか「懲戒解雇」なのか、必ず確認するようにしましょう。
なぜ「解雇通知書」と「解雇理由証明書」の交付を求めるのか?
後々重要な証拠となる
解雇をめぐって労働者と会社側とで紛争となり、話し合いや交渉が必要となった場合や労働審判、訴訟へと発展してしまった場合に、会社側が解雇の有効性を主張するために、当初説明していた解雇理由とは別の理由を追加で主張してくることがあります。
そこで、早期に解雇通知書、解雇理由証明書を取得しておけば、会社は、当該解雇理由証明書に記載された理由以外の主張ができなくなりますので、後付けの主張を許さず会社側の言い分を確定させることができるのです。
セクハラやパワハラを理由に解雇されたのに、自己都合退職にされた場合のデメリット
セクハラやパワハラを理由とした解雇であるにもかかわらず、会社が自己都合退職扱いとしてくるケースがあります。
このような場合は、以下のようなデメリットがありますので、早期に弁護士に相談することをお勧めします。
①失業手当を受け取る際の不利益
失業手当の給付制限期間や受給額において、解雇やその他会社都合退職による離職の場合と比べて不利となる(給付期間が短くなったり、受給額が下がったりする)ことになってしまいます。
②離職票を根拠に、「自己都合による退職」だと主張されるおそれ
解雇をめぐって紛争となった場合に、会社側が、「自己都合退職」と記載された離職票を根拠に、労働者が自分から辞めたのであるから、そもそも会社は解雇などしておらず、解雇規制自体を受けない(解雇の有効無効の判断という問題にすらならない)という主張をしてくるおそれもあります。
③対処せず放置していると、後から解雇を争うことが困難になる
そのような「自己都合による退職」と記載のある離職票を受け取って、その後も解雇である旨の反論もせず放置してしまっていると、労働者側も異議なく認めたということで、後から解雇として争うことが困難になる可能性もあります。
解雇無効・地位確認請求+未払い給与請求
解雇通知書と解雇理由証明書を取得し、そこに具体的な解雇理由の記載がなければ、解雇無効、従業員としての地位にあることの確認を求めることができます。
また、解雇が無効の場合には、使用者は労働者に対して解雇日以降も賃金を支払わなければなりません。解雇が違法・無効となった場合、労働者と使用者の間には依然として雇用契約が継続して存在していたことになるためです。
ただし、解雇の無効を主張したり、解雇が無効だった場合の解雇日以降の賃金を受け取ったりするためには、就労の意思と能力があることを示しておく必要があります。そのため、解雇予告手当を請求する等、積極的に解雇を受け入れたと思われる行動はしないように注意しましょう。一貫して解雇を受け入れない姿勢を明確にしておくべきです。
慰謝料請求
さらに、不当解雇された労働者は、使用者に対して不法行為として損害賠償を請求することができます。
慰謝料とは、不当解雇によって労働者が負った精神的苦痛に対する損害賠償のことです。
しかし、解雇が不当であると認定されたからといって、必ず慰謝料が認められるわけではありません。また、仮に慰謝料が認められた場合でも、その相場は決して高くはなく、高くても数十万円程度と思われます。
もっとも、セクハラやパワハラの事実がないにもかかわらず、そのような事実があると決めつけられるなど、会社による不当解雇の悪質性が高くなればなるほど、慰謝料請求が認められる可能性は高くなりますし、慰謝料額も高くなり得ます。
セクハラやパワハラによる解雇に納得がいかなければ、弁護士に相談を
そもそもセクハラやパワハラなどしておらず、解雇の客観的・合理的な理由が存在しない、社会通念上相当でない解雇であれば、不当解雇です。
会社からセクハラやパワハラを理由に解雇を言い渡された場合は、会社側の言い分をうのみにするのではなく、まずは弁護士への相談を検討することが重要です。
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