事案の内容

依頼者は、会社で不適切な行動を取ってしまい、会社から懲戒解雇処分を受け、重責解雇を理由として失業手当の受給が遅れて生活が困窮するに至りました。もっとも依頼者はこれまで会社から注意を受けたこともなく、いきなり一方的に懲戒解雇処分を受けて路頭に迷ってしまったことに困惑し、どうしたらよいのか弁護士に相談するに至りました。

事案の経過(交渉・調停・訴訟など)

依頼者の話を聞くに、確かに依頼者は会社で不適切な行動を行ってしまっていました。しかし、依頼者はこれまで会社から戒告等何らの懲戒処分を受けたこともなく、今回の懲戒解雇処分事由も、それ一回限りで懲戒解雇処分とすることは適切ではないと考えました。さらに話しを聞き取ると、実は過大な長時間の時間外労働・深夜労働をしていたことが明らかになり、これまで支払われてきた残業代が過小であると疑いました。
そこで、会社に対し、本件懲戒解雇処分が無効であり従業員としての地位を有することの確認を求めるとともに、未払残業代請求をするべくタイムカードや就業規則、賃金規定の開示を求めました。

しばらくすると、会社に代理人弁護士が就き、会社側代理人との交渉を開始しました。もっとも、会社側は依頼者に対して感情的になっており、交渉での解決は困難と判断し、訴訟の準備を進めていきました。
しかし、時間が経過する中で、会社側代理人弁護士から本件懲戒解雇処分が無効であると裁判所に判断されるおそれが極めて高いことをアドバイスされたようで、会社が冷静さを取り戻し、こちらの要求に一部応じる姿勢を見せてきました。

本事例の結末

最終的に、会社は本件懲戒解雇処分を撤回し、依頼者と会社との間で合意退職がなされたこととなりました。そして、解雇が無効であった分、働くことができなかった期間の給与(バックペイ)の支払いを認めました。さらに、未払残業代については全額支払うことを認めました。その結果、訴訟提起することなく、交渉のみで、900万円一括で支払ってもらうことができました。

本事例に学ぶこと

会社による労働者に対する懲戒解雇処分が有効と認められるには様々な手続を要し、簡単には有効とは認められません。懲戒解雇処分というのは、労働者にとってあまりにも重大な不利益を負わせるものであって、簡単に許されるべきものではありません。それにもかかわらず、中小企業では、会社経営者の絶対的な意向に基づいて簡単に懲戒解雇処分を行ってしまうケースが見受けられます。
突然解雇されてしまった場合、自分自身に落ち度があったとしても、一度弁護士に相談してみることを強くお薦めします、

弁護士 平栗丈嗣