どうしても会社に行けず、無断で欠勤をしてしまいました。また、遅刻早退もここ数日繰り返してしまいました。会社の就業規則には、懲戒事由として「正当な理由なく遅刻・早退又は欠勤が重なったとき」が定められているようです。
会社から、仕事を辞めろと言われてしまうのでしょうか。
無断欠勤、遅刻早退は懲戒処分の対象になるか
懲戒処分をするには、会社側には懲戒処分の根拠が必要になります。まずは、無断欠勤や遅刻早退が懲戒の根拠になるのか、就業規則を確認してみましょう。
無断欠勤や遅刻早退が度重なることは、会社側にとっても不利益ですから多くの会社では「正当な理由なく遅刻・早退または欠勤が重なったとき」ですとか「正当な理由なしに無断欠勤○○日以上に及んだ時」などと記載をされていることが多いと思います。
そのため、懲戒処分(懲戒解雇)を行う会社側としても、この就業規則を根拠にして、懲戒処分をしていると思われます。
無断欠勤、遅刻早退によって懲戒解雇ができる場合とは
無断欠勤、遅刻早退がどのくらい行うと懲戒処分(解雇)となってしまうのか。ということは一概には決められていません。
懲戒解雇を行うには、「客観的に合理的な理由があること」「社会通念上相当であること」が必要になってきます。(労働契約法15条には「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定められています。)
そのため、形式的には○日以上の無断欠勤に該当し、懲戒解雇処分に該当するとしても、それが客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でないという場合には、無断欠勤や遅刻早退を理由とする懲戒解雇処分は無効となることがあります。
無断欠勤・遅刻早退を理由にした懲戒解雇が認められた事例と否定された事例
認められた事例
6カ月の間に遅刻回数が24日(うち1日は事前届出を有り)、欠勤回数が14日であって、その期間の就労すべき日数は124日であるところ、完全な就労をした日は全体の69%であり、遅刻又は欠勤をする場合には、事前に電話あるいは同僚に言づける形と定められていた会社について、事前に届け出のない遅刻、欠勤は、会社の業務、職場秩序に混乱を生じさるものであることが明らかであるとし、「正当な理由がなく遅刻、早退または欠勤が重なったとき。」に該当するとして認められました。(なお、解雇権の濫用という従業員側の主張については、遅刻の理由が夜更かしのため、遅刻、欠勤をしても賃金がカットになるだけだから構わないという独自の考えをもっていたということも認定され、遅刻、欠勤は何ら合理性のないものであったともされています。)(横浜地判昭和57.2.25)
否定された事例
その1
就業規則には「欠勤が引き続き16日以上に及んだとき」が懲戒事由として定められていたケースで、大学教員が3月13日~4月16日までの35日間の欠勤のうち、4月14日~16日を除く期間は出勤していなかったケースでは、規則には該当するとしたものの、春休み期間であって学生に対する講義もない時期であったこと、教授会に理由なくケ江関したが教授会自体は滞りなく開かれたこと、学生の進級等に関する手続きも特に支障なく進められ、大学の業務に大きな支障を来したものではないことが認められること、学校側が特に注意を与えた事実も認められないことなどを理由に、懲戒解雇に処するのは相当でなく、権利濫用であるとしました。(仙台地裁平成2年9月21日決定)
その2
「正当な理由なしに無断欠勤14日以上に及んだとき」が懲戒事由として定められており、精神的不調から有給休暇取得後に40日間の無断欠勤をし、諭旨退職処分をした事案において、精神的不調が解消されない限り出勤しないことが予想されるのであるから、使用者としては精神科医に健康診断を実施するなどして、診断結果とウに応じて必要な場合には治療を勧め休職とウの処分を検討し、経過をみるなどして対応をとるべきであったとして、そのような対応をとることなく欠勤を理由に諭旨退職処分の措置をとることは精神的不調を抱える労働者に対する使用者の対応として適切なものとはいいがたい」として判断をしました(最二小判平成24年4月27日)
まとめ
無断欠勤や遅刻早退が多いことを理由に解雇が認められるかということについて、まずは根拠があるか、就業規則を確認しましょう。
その上で、根拠に当てはまるとしても、解雇処分が妥当なのか、欠勤の回数、基幹、正当な理由があるか、業務への支障の程度、使用者からの注意があったかなど、いろいろな事情を考慮して、社会通念上相当と認められるのかを検討する必要があります。