産休・育休・介護休を理由とする不当解雇

産休・育休・介護休を理由とする不当解雇について見ていきましょう。

産前産後休業とは

労働基準法65条が根拠となります。
出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間)の女性が請求した場合には休業を取らせなければならず、産後8週間以内の女性については休業させなければならないと定めています。
妊娠・出産などに際して女性の健康・安全を保護するための制度です。

育児休業とは

育児介護休業法5条

満1歳未満の子を養育する労働者は、男女を問わず、子が満1歳に達するまでの期間(1歳の時点で保育所への入所ができないなど特別の事情がある場合には1歳6か月まで。2017年改正により、同様の事情がある場合にはさらに6か月(2歳)まで延長可能)、育児休業を取得することができます。

労働基準法19条1項

産前産後の女性が出産予定日の6週間前・産後8週間及びその後30日間は、解雇してはならない。

雇用機会均等法9条3項

妊娠、出産、産前産後休業の請求・取得などを理由とする解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

雇用機会均等法9条4項

妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は無効とする。

このように、産前産後休業及び育児休業については、複数の法律が妊娠・出産・育児を理由とする解雇を禁止しています。

産前産後休業・育児休業を取得した場合で、解雇がなされた場合、表向きは別の理由だとしても、実質的には産前産後休業等を理由とする解雇の場合もありますので、まずは、会社に解雇通知書や解雇理由証明書を発行してもらい、解雇に至る経緯などの事実関係を考慮したうえで、解雇の効力を争うことが出来るかどうか検討していくことになります。

介護休業とは

介護休暇は、原則として半日単位で、年度ごとに5日を限度として取得できます(育児介護休業法第16条の5第1項、同施行規則第40条第1項)。なお、要介護状態の対象家族が複数いる場合は、介護休暇の取得上限が年間10日に増えます。
介護休業は、要介護状態の家族(育児介護休業法2条3号・4号、施行規則1条・2条参照)をもつ場合、男女を問わず、対象家族一人について、通算93日の範囲内で3回まで取得することが出来るとされています。

まとめ

介護休暇・介護休業を理由とする解雇は原則許されません。
介護休暇・介護休業の取得を申し出たことや、実際に取得したことを理由として、労働者を不利益に取り扱うことは法律上禁止されています(育児介護休業法第16条の7、第16条、第10条)。
このように、介護休暇・介護休業を理由として労働者を解雇することは、不利益取り扱いの禁止にあたります。

また、解雇をするまでには至らずとも、介護休暇・介護休業を理由として、労働者に退職するよう説得する行為(退職勧奨)についても、同様に不利益取り扱いの禁止にあたります。
解雇・退職勧奨以外にも、介護休暇・介護休業を理由に減給したり、人事評価上のマイナス点をつけたりすることなども、不利益取り扱いの禁止にあたりえます。

このように、介護休暇・介護休業に関する不利益取り扱いの禁止ルールがありますので、会社が表向きには別の理由を提示して、労働者を解雇するケースが存在します。
このような場合でも、表向きの解雇理由には中身がなく、実質的には介護休暇・介護休業を理由とする解雇であるといえる場合には、やはり、不利益取扱いの禁止にあたり、解雇は無効になります。

介護休暇・介護休業を取得した場合で、解雇がなされた場合、表向きは別の理由だとしても、実質的には介護休業等を理由とする解雇の場合もありますので、まずは、会社に解雇通知書や解雇理由証明書を発行してもらい、解雇に至る経緯などの事実関係を考慮したうえで、解雇の効力を争うことが出来るかどうか検討していくことになります。

これらの休暇休業を理由に解雇されてしまったら

解雇の理由が産前産後休業等の休業を理由とするかどうかは一見してわからないケースも多くあります。
ただ、解雇という手段は、労働者の権利・利益を大きく害するものですので、解雇理由が各種休業・休暇である場合でも、そうでない場合でも、解雇の効力を争う余地はあります。
そのため、解雇されてしまったという場合には、一度、弁護士にご相談ください。有効なご助言・ご助力をさせていただきます。